2022年JFL開幕!気になるキングカズ効果

2022年JFL開幕!気になるキングカズ効果

2022年3月13日(日)、日本サッカーリーグ(JFL)が開幕。

「キングカズ」こと三浦知良選手が大きな話題となっていますが、開幕スタメンを飾りました。

「キングカズ効果」はどのようなものか、速報レベルですが集計してみました。

(1)観客動員4,620人

これは、所属する鈴鹿ポイントゲッターズにとってどれくらいインパクトのある数字なのか。

まず、チーム歴代最高の観客動員は、2019年に記録した1,308人。

歴代最高の記録を360%以上更新したことになります。

さらに驚くのが、昨シーズン(2021年)の合計観客動員が6,164人ということで開幕戦だけで昨年全体の80%にも達しています。

鈴鹿ポイントゲッターズのチケット料金は全席自由席で

前売り(WEB販売):大人1,000円/中高生500円/小学生以下無料

当日券:大人1,500円/中高生800円/小学生以下無料

となっており、招待券がどの程度配布されているかなど含めて詳細が一切不明のため憶測でしか書けませんが300~400万円程度の収益に繋がったのではないでしょうか。試合会場での飲食やグッズ販売なども大きく収益に寄与しているに違いありません。

(2)試合配信を6,000人以上が視聴

開幕戦は鈴鹿ポイントゲッターズのYouTube公式チャンネルにてライブ配信されました。

※JFLの試合は基本的に全試合無料配信されています

試合開始直後から視聴者数が続々増えていき、後半開始5分程度で6,000名を上回りました。

 

配信画面のスクリーンショット

 

同時刻開催で他チームも試合が行われていましたが、200-400名程度の視聴者数であり、単純計算で15-30倍の視聴数を稼いだことになります。

(3)メディア報道は測定不能

試合直後には一般紙などもWEBニュースに記事を掲載するなど、早速多くのメディアに取り上げられています。これから夕方や翌朝のニュース番組、ワイドショーなどでも露出の機会が想定されます。

昨今はJリーグやプロ野球も含め、ニュース番組で取り上げられることも相対的に減っている中で「全国ニュース」として扱われること自体に比較対象がない気がします。

チームスポーツにおいて、個人のパフォーマンスがそのまま大きなニュースになるのは、野球の大谷翔平選手と三浦選手くらいではないでしょうか。

さらに三浦選手は、現役でありながら日本経済新聞に隔週でコラムを掲載しています。これはまさに唯一無二。世の中無数の広報パーソンが日経本紙に記事を載せるのにいかに苦労し、掲載された時に喜びを感じるか。

それを想像しただけでも大きなバリューです。

(4)ユニフォームスポンサーに横浜FCから2社

横浜F Cのユニフォームに広告を掲出している「FRONTIER」(インバースネット株式会社)と株式会社フュディアルクリエーションが22年から鈴鹿ポイントゲッターズのスポンサーにもなっています。「FRONTIER」は背中上、フュディアルクリエーションは鎖骨右。業界の常識的には「胸スポンサー」の次点となる上位スポンサーです。両者合わせて数千万円のスポンサー収入といったところでしょうか。この収入はクラブ経営にとって間違いなく大きなインパクトです。

 

試合ではどうだったか

開幕戦を2-0の勝利で飾った鈴鹿ポイントゲッターズでしたが、三浦選手が出場した前半はチームとしてのシュートが0でした。

三浦選手の見せ場としても、前半41分に三宅海斗選手からのクロスにヘディングをしようと飛び込んだシーンくらいだったのではないでしょうか。

(シュートシーン)

特に前半33分に相手選手が退場して数的有利になっていた中で、チャンスに絡むシーンがほとんど見られなかったのは気になるところです。

最も、チーム全体の問題でもあるので今回のパフォーマンスを元に次節もスタメンを飾ることができるのかがポイントになるかと思います。

事業面における期待とストーリー

開幕戦では兄の三浦泰年監督による「予告先発」が大きな話題と集客に繋がりましたが、当然ですが毎回やるわけにはいかないので、「三浦選手がスタメンに定着すること」こそが事業面で期待値を描くための前提条件となってくると思います。

その上でプロ野球球団やJクラブが注力しているCRMに落とし込めるか。チケッティング、MD、ファンクラブなどを戦略的に展開していくことがキーになってきます。現状はいわゆるメディアが取り上げてくれる「空中戦」で華々しい様相となっていますが、もし事業面に落とし込んでクラブの事業価値を高めることができれば、一過性ではなく大きな財産になってくることでしょう。そのためには人的リソースも含めた体制づくりが大事になります。

例えば開幕戦に来た4,620人はどのような人たちか。三重県内の方々なのか、初めて来たのか、そうじゃないのか。グッズは買ったのか、試合には満足したのか、また来たいと思ってくれたのか。
このような情報を取得した上でコミュニケーションを徹底し「顧客としての関係を深める」。これがクラブの財産に繋がります。ただ、チケッティングは外出しまたは紙チケットで販売しているため、現状では難しい。

広報としても今は「向こうから来てくれる」というフィーバー状態ですが、少し落ち着いた時に自発的に矢を放てるか。鈴鹿ポイントゲッターズは三重県初のJクラブを目指している(同カテゴリーにヴィアティン三重も存在します)ので、三浦兄弟の挑戦とクラブの挑戦を掛け合わせてストーリーを作ることも有効かと思います。

始まったばかりの22年JFLですが、1人のスター選手の加入によってクラブがどう変わっていくかにも注目してみると面白いと思います。

加藤謙次郎

ヤクルト球団広報、侍ジャパン広報などを経て、スポーツビジネスをメインとしてコンサルティング事業を展開する株式会社R.E WORKSの社長に就任。推しを見つけるスポーツメディア「My Star Sports」主宰