〈社会人野球〉シティライト岡山 “打線の主軸”ベテランコンビ 谷雄太選手、小竹一樹選手インタビュー
2022年7月、東京ドームで行われた第93回都市対抗野球大会。社会人野球の二大大会のひとつであるこの大会に、惜しくもチームとしての出場は叶わなかった「シティライト岡山」ですが、補強選手に選ばれ出場を果たした選手がいます。
谷雄太外野手(中国地区第二代表 JR西日本の補強)と、小竹一樹内野手(中国地区第一代表 JFE西日本の補強)です。
チームの現役選手の中では一番長く在籍しているのが谷さん、続いて小竹さん、というベテランの二人で、打線の中でも主軸を担う右・左(バッター)コンビです。「シティライトには本当にこの二人がいないと…!」という感じで、絶対に欠かせない存在です。
キャプテンの丸山選手がそのように語るお二人に、今回はたっぷりとお話をうかがいました。
シティライト岡山のインタビュー第4弾です。
▼過去インタビューはこちらから
第1弾 “全国ベスト8へ” キャプテン丸山高明選手インタビュー[記事はこちら]
第2弾 1年目から守備の要を担う“期待の新人” 谷本大晟選手インタビュー[記事はこちら]
第3弾 “勝負の3年目バッテリー” 米田知弘投手、江川航捕手インタビュー[記事はこちら]
――まずはシティライト岡山への入社のきっかけと、入社当初のチームの印象を教えてください。
谷 大学4年生の11月、僕はまだ就職先が決まっていませんでした。実は、卒業に必要な単位の取得が危なくて…(笑)そんな時に、中学校時代のリトルシニアの監督から「シティライトさんの練習に参加してこい!」と紹介を受けて参加させてもらい、その後入社が決まりました。入社前は、正直シティライトのことをあまり知りませんでしたが、入ってからは人数は少ないけどやりやすくて良いチームだなと思いました。
小竹 僕は、大学4年生の時にプロ志望届を出しました。その頃シティライトの練習にも参加させてもらい、もしプロがダメだったらと声をかけてもらっていました。僕の出身大学(=日本橋学館大学)のコーチが当時、明徳義塾高校出身の方でしたが、ちょうどその頃、明徳義塾高校の監督 馬淵史郎さんの息子さん(=馬渕烈さん:明徳義塾高→拓殖大)がシティライトに在籍しており、その繋がりで紹介してもらっての参加でした。その後、ドラフトでは残念ながら指名漏れとなってしまい、シティライトへの入社が決まりました。
僕も谷さんと同じで、野球部の環境も会社のこともよくわからない状態での入社でした。車屋ということだけは聞いていましたが、入ってみるとガソリンスタンド勤務だったので少しびっくりしました (笑)野球部については、プロへ何人か輩出していると聞いていたので、自分も社会人からのプロ入りにチャレンジしようと思って入りました。
――実際に入社してみて、社業と野球の両立はいかがでしたか?
谷 僕は当初から、社会人野球をやる以上両立は普通のことという意識だったので、特にそれ自体の難しさというのは感じませんでした。会社の方々と関わりがある中で、応援してもらえるのは本当にありがたいと感じますし、会社の中で野球をやらせてもらっているので、その分野球部の活動を通して会社の知名度をあげるなどの貢献ができたらいいなと思っています。
小竹 僕は谷さんと逆で、入社当初結構大変でした…(笑)昼間ガソリンを入れて、それから練習して…。ガソリンスタンドはセルフではなくフルサービスだったので、洗車やパンク修理などもしていました。仕事中も走り回るので、練習との両立は体力的にも慣れるまでに時間がかかりました。
――小竹さんは入社されて8年、谷さんは10年になりますね。
「ベテランの二人はチームの良い時も悪い時も知っている」と丸山キャプテンからお聞きしました。これまでのチームを振り返っていかがですか?
谷 入社3年目の時に、僕としては初めて(全国大会への)代表決定戦へ進みました。代表決定戦とそれ以前の予選とでは、自ら意識しているつもりはなくてもやはり何か違うものがあって…。“普通に勝つ”ということがものすごく大変なことなんだなと思いましたし、それまでに代表決定戦で11連敗ほどしていたので、あとひとつ勝つことの難しさをめちゃくちゃ痛感しました。
以前は、自チームのミスから相手に流れを与えてしまう展開がとても多くて、序盤から大量失点という試合が目立っていました。ですが、都市対抗へ出場できた2019年は、エラーが少なくバントなど小技もしっかりと決めることができて、チームとして良い試合運びができたと思います。
小竹 勝てないでいた数年間は、良い投手はいるものの層の厚さという点では少し課題があったかなと感じます。ですが2019年は、児山(=児山祐斗投手)と後藤田(=後藤田崇作投手:2020年引退)の二人がチームにとっての大黒柱となってくれました。「この二人が投げれば勝てる!」と思える、そういった信頼関係が野手の守備や打撃にも気持ちの面で良い影響を与えたのではないかと思います。
谷 たしかに、その年はみんなの意識が高かったように感じますね。その中でも特にJABA岡山大会がターニングポイントになったかな、と。初めて決勝トーナメントに進んで、準決勝でHondaに勝つことができました。結果的に優勝はできませんでしたが、全国トップレベルの強豪チームを相手に競り勝てたことは、チームにとってその後の大きな自信に繋がったと思います。また個人的には、その試合で児山が覚醒してくれたと感じました。全員が意識高く試合に臨めていてミスが無く、相手に流れを与えない試合づくりができたことが、それを後押しできたのではないかなと思います。
――投手と野手で互いに相乗効果を生み出せていたのかもしれませんね。
そして全国大会への出場が決まり、実際にその大舞台に立ってみていかがでしたか?
小竹 僕は、自分自身がグラウンドに立つ全国大会というのはこれまで学生時代も経験が無く、都市対抗が初めてでした。なので、東京ドームでの応援の景色を見た瞬間は、心が浮つくというか地に足がつかない興奮というか…。「これが全国大会か…!」という衝撃を受けたのを覚えています。試合自体は、緊張やプレッシャーというよりは割と楽しむことができたので、全国の舞台だということをプレー中に特別に意識することはありませんでした。とにかく、グラウンドに入った瞬間というのが今でも強く印象に残っています。
谷 シティライトは岡山の会社なので、全国的に名が知られる大企業に比べれば人数も多くないし、東京ドームは遠いこともあって正直そこまでお客さんは入らないんじゃないかなと思っていました。ですが、実際試合の時になってみると、内野の三塁側が全部埋まってレフトスタンドの方まで大勢の人が入っていました。それを見た時には感動で鳥肌が立ちました。と同時に、都市対抗に出ることは本当にすごいことなんだなというのを実感しました。
個人的には、中学生の頃2回ほど全国大会に出場以来、高校そして大学もあと一歩のところで届かず…。社会人になって7年目、ようやく掴んだ全国の舞台だったので本当に嬉しかったですね。それと、東京ドームの打席に初めて立った時は、他の球場とは違う感覚があって感動しました。京セラドームでも感じなかった、東京ドームならではの何か独特な…、言葉で表すのは難しい変な感覚でした。試合中、緊張は無かったです。結果的に4-3で勝ちましたが、楽しくて一試合がものすごく短く感じて、試合終了の時にはもう終わったのかという感じでした。
――そんな、全国大会も経験したお二人が考える社会人野球の魅力とはどんなところでしょうか?
小竹 “オッサンが全力プレーをしている”ところです!(笑)自分自身、今年で30歳になりましたが、世間一般で言ったらもうオッサンです。高校や大学は年齢が決められていますが、社会人野球は特に決まりがありません。また、プロ野球は年間何百試合とあるのでうまく力を抜くところは抜かないと体力的に難しいところがあると思います。ですが、社会人野球は予選トーナメントも本戦も一発勝負です。そういった点では、オッサンがこれだけの全力プレーを見せられるというのも社会人野球ならではで、おもしろい見どころだと思います!
谷 全国大会や全国大会出場をかけた試合は、負けた瞬間に泣き崩れる選手もいます。一試合、一球にかける気持ちの強さというのは甲子園を目指す高校球児と同じで、“大人になっても泥臭く”上を目指してやっているというところが、社会人野球の魅力のひとつかなと思います。
――現在、谷さんはコーチ兼外野手として在籍されていますね。
お二人がベテランとなった今、チームの中での自分の役割をどのように考えていらっしゃいますか?
谷 僕は基本的に、技術的なことはそこまで多くは言いません。野球を社会人までずっとやってきている時点で、もう各々自分のかたちというのをある程度持っていると思っています。なのでそこは尊重して、何か上手くいかなくて悩んでいる様子があれば、その時はしっかりとアドバイスができるように、という思いではいます。その大前提として、若い子たちもやりやすい環境を作ってあげることを意識するようにしています。
小竹 今のチームは年齢的な構成で言うと、中堅層があまりいなくて上と下の差が結構ある状況です。何か聞きたいことがあっても下の子たちからはなかなか聞きづらいと思うので、自分のできる範囲で声をかけて教えるようにしています。ただし、自分のやり方を押し付けることはしないように気をつけています。例えば、「自分だったらこっちの方が良いと思う」と提案をするような感じだったり。特に谷本(=谷本大晟内野手)、江川(=江川航捕手)、小木曽(=小木曽翔理内野手)は、自主練をしようと自分からも向こうからも声をかけ合うことがよくあります。全体練習のバッティングでも自分が見れる時はなるべく見るようにしています。
――後輩選手たちとのコミュニケーションは、練習の場以外でもあったりしますか?
小竹 谷本、小木曽をはじめとして新人の子もですが、家でごはんを食べる時に誘ったり、釣り に一緒に出かけたりしています!シーバス、あとは岡山名物のままかり。コロナ前で言うと、結構な大人数で海へメバルを釣りに行ったりもしていました。
谷 僕は、たまに試合で結果を残した選手とかをごはんに連れて行ってあげたりしますね!
――後輩選手たちとも非常に仲の良い様子のお二人ですが、今後の活躍に期待を寄せている選手やぜひ注目してほしいといった選手はいますか?また、お二人から見るその選手の持ち味や印象を教えてください。
谷 僕は、職場も一緒の石井太尊選手ですね!バッティングが魅力です。独特なフォームだったりもしますが、そういったところも含めて彼なりに自身の考えを持って色々なことに取り組んでいる、そんな選手です。これからに期待です!
小竹 僕はまず一人選ぶなら、江川選手です!今年から副キャプテンでもありますし、キャッチャーなので第二の監督と呼ばれるようなポジションでもありますし。彼とはよく一緒にバッティン グ練習もしますが、結構悩み込むタイプの選手で…。元々の能力は高い選手だと思っているので、もう少し気負わずやってほしいなと思いつつ、今後の活躍には期待したいです。一人で本当に熱心に練習していることもあるし、本来、肩がいい。長打力もある。その力を開放してほしいですね。
あともう一人、ぜひ注目してほしい選手が小木曽選手です!キャラクター的にちょっとお笑い担当みたいな(笑)新人で入ってきてすぐチームに溶け込んで、今では小木曽が打席に立ってヒットを打った時なんかはチーム一番の盛り上がりです。チームの雰囲気が良くなることは試合でもとても大切なことなので、スタメンで出場した時にはキーマンとなってくる選手だと思います。いい場面で打席が回ってきたり、運も持っている選手だと思うので、そういったチャンスをものにしてほしいです。
――ちなみにですが、お二人はお互いにどのような印象をお持ちですか?
小竹 谷コーチは付き合いで言うと8年になりますが、顔も男前ですし、バッティングも天才ですし、もう最高ですね!!男として最高です!野球選手としてだけでなく、男性としても魅力的な方です!(笑)お子さんがいらっしゃいますが、本当にいいパパだなと思います。
谷 小竹は、今いる選手たちの中だと一番長い付き合いになるんですが、入社した頃からごはんや温泉などプライベートでも本当によく一緒にいたので、もう同級生みたいな存在ですね(笑) 野球でも、“小竹がいるのといないのではシティライトの打線が全く別物になってしまう”というほどの力を持っているので、ずっと期待しています!
――さて、来月には社会人野球二大大会のひとつ、全日本選手権の最終予選が始まりますね。チームや社会人野球のファンの方々からも、より注目される時期だと思います。応援で言うと、昨シーズンからはグッズの販売もスタートしましたね。
谷 はい!身近な人たちはグッズが出たことをかなり喜んでくれて、買ってくれている様子というのは直接僕自身にも届いているので、本当にありがたいですし嬉しいです。
小竹 僕の家族はキーホルダーを付けています!そういったものが出て、一番はやっぱり家族が喜んでくれているのかなと思います。応援してくださる方々がグッズを持っていてくれたら僕も嬉しいです!
――最後に、このあとの試合に向けて意気込みをお願いします!
小竹 やっぱりチームで掲げている全国ベスト8。チーム一丸となってまずは全国大会への出場、そしてこの目標を目指していきたいです!僕個人としては長打力で魅せたいです。僕は足があまり早くないので足で活躍できない分、フルスイングのバッティングでチームに貢献したいと思います!
谷 小竹のフルスイングは社会人イチです!!(笑)そして僕は、いいところでの一本を決めたいと思います。がんばります!
◯インタビュー選手紹介
谷雄太(たに ゆうた)
1990年8月28日生まれ 広島県出身
大阪産業大附属高校 ‐ 関西学院大学 2013年入社
右投左打 コーチ兼外野手
小竹一樹(こたけ かずき)
1992年8月5日生まれ 茨城県出身
青森山田高校 ‐ 日本橋学館大学 2015年入社
右投右打 内野手
■「シティライト岡山 硬式野球部」
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